ポタリング ~ カワセミを初めて見た
この日は通院の日。これまで車で行っていた少し遠くにある病院にせっかく買った自転車で行ってみようと思い立った。
近くに川があるのは知っていたので病院が終わったら川辺で昼ごはんでも食べながら川と自転車の写真でも撮ってみようと一眼レフを持って出かけたのだ。
天気は上々。遊歩道沿いに自転車を止め川辺に座って昼ごはんを食べる。
川の水はそれほど綺麗とは言えないが留まること無く流れている水の動きは見ているだけで飽きない。
あぁ・・これは吉川英治の三国志の冒頭に出てくるシーンのようではないか。
「悠久と水は行く・・・」
劉備玄徳が黄河の畔で母親の為に茶を求めて商船を待っているシーンだ。
もちろん私は劉備玄徳のような人物の足元にも及ばない、むしろ黄巾賊サイドの下っ端辺りの存在さ。
今もこうして平日の昼間からこんな川辺で呑気におにぎりなぞ頬張っているのだから。
川辺の遊歩道を散歩するのはお年寄りばかりである。
思えば田舎の母にもう何年も会っていない。
あぁ・・なんて俺は親不孝ものなんだろうか・・。
人生何処で歯車が狂ってしまったんだろうか・・・まだやり直せるのだろうか・・。
一人物思いに耽りながら「あぁ・・このおにぎり旨いっす」と自省の色も無くパクパクと食べていた。
名も知らぬ地味な鳥が人間を怖がる様子も無く近くの枯れた草の中に嘴を突っ込んでいる。
お前も生きるのに必死なんだなぁ・・・俺も必死だよ。
なんて思っていると視界の隅に綺麗な色の鳥が入ってきた。
慌ててシャッターを切る。
間違いない!あれはカワセミだ!!
悠久の思いも、田舎の母も、旨いおにぎりも、地味な鳥も全部忘れてカワセミを追う。
30m程上流に行った川の中に水位計が設置されていてカワセミは一瞬その上に留まっていたのだが一転してまた下流の方に飛び去ってしまった。
その様子を水位計の近くのベストポジションで見ていた男性が居た。
まるでそこにカワセミが来るのが分かっていたかのようにだ。
私はその男性に近づき
「今のカワセミですよね!」
と挨拶もなく聞いてしまった。
何せ前から見たいと思っていたカワセミを思いもかけない場所で見たので興奮していたのだ。
例えば都内だったら水元公園はカワセミ撮影スポットとして有名である。私の会社の先輩も水元公園でナイスなカワセミ写真をたくさん撮っている。
カワセミを見よう、撮影しようと言う目的で水元公園に行ってカワセミを目撃するのは言わば出来レースである。
しかしこれは違うのだ。
男性は不躾な私の質問に有段者(なにの?)の余裕の笑みをたたえながらこういった。
「あの水位計の上に良く留まるんだよ。あそこから水中の魚を探すんだ。」と教えてくれた。
私「そうなんですか!ありがとうございます。いやぁカワセミ初めて見たんですよ、綺麗ですねぇ!あそこに良く留まるんですね?そうなんですね?じゃあここでしばらく待ってみます、ハァハァ」
とまくし立てる私に男性は笑みを絶やさぬまま会釈をして下流へと去っていった。
やはり男性は知っていたのだ、このポイントを。
ならばここで待機。だって「水位計の上に良く留まるんだよ」なんだから。
待つこと30分・・・集中力が途切れかけてきたその時・・・、
来ました、本当に。トリミングしてこのサイズ。私の300mmでは限界でした。
ピントも微妙に甘い。何枚も撮影してこれがベストなのだから今後腕を磨かないといけない。
このあとカワセミは下流に向かいながら時々ホバリングをして上空から魚を探し、川の中へ豪快にダイビングをしたりしていました。
飛んでいる状態でピントを合わせるのは至難の業で、ホバリング状態でも・・
こんなレベルの撮影で・・・。クリオネか・・・。
実はね・・有段者さんから「大池親水公園」にカワセミがたくさん居るよと教えて貰ってたので今日行ってみたんですわ。
居ませんでした・・カワセミ。
性懲りもなくまたこの水位計ポイントにも行ったんですよ、今日。
居ませんでした・・カワセミ。
残念!!またリベンジに行きます。遊歩道ポタリング気持ち良いしね。
今日の獲物